13世紀イスラム世界、モンゴル帝国、そして大陸までも巻き込むことになる一人の女性の物語です。

【タイトル】
 天幕のジャードゥーガル
【著者】

 トマトスープ (Tomato Soup)
【出版社】

 秋田書店
【刊行情報】

 1巻

13世紀イスラム世界から

13世紀初頭、奴隷市場から都市トゥースにやってきたシタラ。彼女は、屋敷の坊ちゃんであるムハンマドから「知恵」とその使い道を教えられます。そして、それが、彼女の人生を大きく変えはじめるきっかけになるのでした…。

学校の図書館にあっていい

小学校の図書館にあっていい正統派マンガだと思います。歴史的で、哲学的で、奴隷制度、戦争・略奪・捕虜、子どもが抱えるジレンマ、生と死を学べる正統派マンガです。小学校にあるべき最大の理由は、勉強する意味を1話から学んでくれる子どもが多いと考えるからです。もちろん大人も頷ける説得力はあります。

歴史モノを読むこと

マンガを読むときは深いことを考えないようにして「おもろいわ〜」くらいの感覚で読んでいます。
でも、歴史モノを読む時には「現代人と過去人では価値観が絶対に違う」と頭の片隅で思うようにしています。
現代人同士ですら価値観の相違があるので、生きる時代、地域、国が違えば、絶対に形成される価値観は違います。
そして、ムハンマドは12歳にして、境遇から形成される価値観の違いを理解しています。彼の言葉には重みを感じるのと同時に、学者って複雑なことを考えていて変だな〜とも思ってます。これはムハンマドの生きる道と、ブログ主の私の生きる道が違うから「変」と感じているのです。この「変」が価値観の相違です。

歴史家は、過去の人たちの声を代弁するのが仕事です。そしてマンガ家は、キャラクターたちの声を代弁するのが仕事です。価値観の異なる人たち・キャラクターたちの声を代弁するのは、はっきり言って苦行だと思ってます。だって第三者の価値観は100%わからないのに、それを紡ぎ出すなんて、苦行以外のなにものでもないです。ゆえにすごい。

怒涛の展開

第1幕を読んでいて「シタラとムハンマドの物語か〜」と思っていたら、1幕の最終ページのモノローグ2行で衝撃。第2幕ではトゥース軍が遊牧民に敗れ、いきなり絶体絶命。小さな幸せからの大きな絶望を叩きつけてきますが、怒涛の展開に引き込まれます。下手な引き伸ばしがないので「あぁ、このマンガは決まっている完結に向かって着実に進んでいる」と考えます。

これこそマンガの絵

人物はリアルではなくデフォルメが強いですが全く違和感がなく、手塚治虫くらいデフォルメしています。そして背景もデフォルメさせてるように見えますが、ガッツリ描き込みしてます。1巻中盤くらいから、地面の荒さと雑草をこれでもかとちゃんと描いています。
そして作品最大の特徴でもある幾何学的模様や刺繍と装飾を描くことに、心血を注いでいます。作業を簡略化できるところは簡略化して、複雑化すべきところにリソースを割いているようにみえます。

何の違和感もなく子どもから大人まで読める正統派マンガです。Souffleから第1話が読めますので、色々な人に読んでほしい1作です。

投稿者

しめさば

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